完調日記6

完調日記(2010/05/24)

テーマは、続いてグッとくる名言を拾ってみよう! である。

昨今グッときた名言を二つ。

 

悪い人間には共通点があるのを知っているかな。悪人たちのその共通点とは、自分を憎んでいるということだ。

自分を憎んでいるから悪いことをするのだ。悪事は自分を傷つけ、かつ罰することができるからだ。だから、彼らは破滅への道を転がり続けてゆく。

それだけではすまない。悪人が自分自身に向けた憎悪と復讐心は、周囲の人々をも犠牲にする。ギャンブル依存症の人が周りの人々に迷惑をかけるのと同じことだ。

だから、悪人の不幸を自業自得だと傍観しているだけではよくない。彼が自分自身を憎むのではなく、なんとかして愛することができるようわたしたちは努めようではないか。

そうでないと、悪は急速にはびこってしまう。      ニーチェ(『曙光』)

 

カッとなって何かに八つ当たりをした時の心境を思い出してみよう。原因がたとえ自分ではなくても、そうした状況に陥らせてしまった自分への憎悪が、そこにはないでしょうか。私はよくあるんです、そういうことが。

八つ当たりの対象が自分の持ち物や周辺の何かになるのは、その為なんでしょうね。つまり八つ当たりってのは自分を罰しているわけだ。

 

とすれば、これからの季節に増えてくる暴走族の騒音も同じかも。彼らはあーやって自分を憎み自分を罰しているのかも知れない…。また、昨今他国を挑発して周辺を困らせている国があるでしょ。あそこも同じ可能性があります。一見、愛国心が溢れているようでも、実は一番自分の国を愛していないのかも知れない。とすれば、困った国だと唾棄しないで、もっと違ったアプローチが必要じゃないでしょうか。

 

「かんべんしてやる。これからは人をそそのかして物を盗ませたりしちゃいけないよ。どうしても悪いことをせずにいられなかったら、自分一人でやれ。善いことも悪いことも自分一人でやるんだ」

坂口安吾(『風と光と二十の私と』)

 

これは無頼派として第二次世界大戦後に活躍した坂口安吾が、小学校の代用教員をした時の説教の言葉だ。落第生が他の子供をそそのかして万引きをさせた時、安吾はこのように言って説教した。

 

「悪いことはするな」とは誰でも言える。でも、「善いことも悪いことも自分一人でや」れとはなかなか言えない。なぜなら、みんな善いことも悪いことも人に流されてやっているからでしょうね、私もそうですけど。

大切なのは、やるべきか、やらざるべきかじゃなくて、やりたいか、やりたくないかなんでしょうね。だって理由は後からいくらでも付けられますが、意志や希望はそうではありませんから。そこには誤魔化せない何かがありますね。

人間というものをこよなく愛した安吾らしい言葉です。

もち、この日記もやりたいからやってるんですよー。

 

ニーチェにしても安吾にしても、思想書や作品から入るとちょっと解りにくいかも知れません。そうした時はこのような名言を拾ってみるところから入ることをお勧めします。ちなみにニーチェの言葉は、『超訳ニーチェの言葉』(白取春彦翻訳、ディスカヴァ・トゥエンティワン、2010年)、安吾の言葉は『グッとくる「はげまし」言葉』(斎藤孝、文春文庫2007年)から取りました。

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染谷智幸(そめや・ともゆき)所属は文学部文化交流学科

専門は日本文学(江戸時代)、日韓比較文学

父は人形師。その血を受け継いで人形をこよなく愛す。

写真はご存知、金太郎。

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