完調日記8

完調日記(2010/06/14)

テーマは、自慢話?を少々 である。

 

この6月30日から数日、韓国へ出かけてくる。な、なんと韓国は天下のソウル大で講演をするのだ。

しかも、その講演の前にはちょっとした式があって、私を表彰してくれるらしいのだ!

 

ここで話が終われば、センセーすごいじゃん、ということなのだが、そう話は単純ではない。話の聞きようによっては、センセーめっちゃ恥ずかしいじゃん、ということにもなる。そこが私の偉いところである。

ま、ともかく、なぜ、こんなことになったのかと言うと…。

 

時は2年前、九州は福岡にある古書店の目録を見ていたら、『紀伊齋常談』(きいさいじょうだん)という聞きなれない本が売り出されていた。写真が一葉ネットに貼り出されていて、それを見ると漢文で書かれた写本であった。ちょっと読んでみると、これが非常に怪しくエロティックな内容、所謂、好色本というやつである。

これは面白そうだというので、買い求めて(値段は秘密である)読んでみると、すこぶる面白い。しかも題材は李氏朝鮮、お隣の韓国、朝鮮時代であった。

 

さっそく、ソウル大の先生で友人の鄭炳説(ちょんびょんそる)先生に連絡をして、みてもらったところ、これは貴重な本だということが分かったのである。(日本にはこうした本はいくらでもあるけど、お隣の韓国は儒教のお国柄、この手のものがあまり残らないのである。日本に残っていたというのも、そうした事情を反映してのものだろう)

それから、しばらくして鄭先生から連絡があり、ぜひ韓国で出版して紹介したいとのこと。私はすぐさま賛同し、鄭先生が現代語訳(韓国語)と解説を書き、私が推薦文を書くということになった。

 

鄭先生はその本の実物を手元において研究したいということなので、じゃ、それならば、ついでソウル大に寄贈しちゃえっていう話になって(ぉおお!太っ腹!)、それで寄贈することになった次第なのである。

 

で、そうこうしているうちに、本は出るわ、その記念に講演を頼まれるわ、寄贈式を行うことになるわ、という次第…。

紀伊1(韓国で出版された本の表紙、題名は『朝鮮の淫談稗説』)

 

面白かったのは、向こうからの招請状に「高潔なる染谷先生のご厚意」って書いてあった点である。好色本(エロ本)を寄贈した高潔な先生ってねぇ・・・、あーた

なんか、矛盾してなーい?(笑)

 

ま、ともかくそんなことで、ソウルまで行ってきます。たぶん、珍道中でしょうから、またまたご報告することになりましょう。

 

ちなみに、ちょっと真面目な話をすると、この、

本は寄贈すべし

は僕の信条です。よく高価な本や美術品を買って集めている人が居ますね。それは資本制社会だから構わないけど、最終的にはどこかにきちんと寄贈すべきだと考えます。ま、売ってもいいけど。少なくとも、そうしたブツが買った人間のものだという誤った考えだけは持たないでほしいと思います(ちょっと前に、自分が死んだら、買った美術品も一緒に埋葬してくれと言ったトンデモナイ御仁が居ましたね)。

そして、出来れば、その本や美術品がどこにあるのが一番よいかを考えるべきでしょう。そう考えれば、今回の本はたまたま僕が買ったけど、ソウル大に寄贈するのが一番良いと考えたわけです。そうすれば、韓国の研究者たちが、いつでも見られますからね。

 

それから、この本の出版、韓国でけっこう評判になっているみたいです。ニュースや新聞にもけっこう大きく出ているみたい・・・。先日も、うちの大学に交換留学生として来ていた韓国人の卒業生から連絡があって、先生の名前が新聞に出ていて、つい懐かしくなりました、とありました。

嬉しさ半分、恥ずかしさ半分、といったところ。

次は、もうちょっと、表立って?自慢できる本を見つけなきゃね!

 

CIMG4102

染谷智幸(そめや・ともゆき)所属は文学部文化交流学科

専門は日本文学(江戸時代)、日韓比較文学

父は人形師。その血を受け継いで人形をこよなく愛す。

写真はご存知、金太郎。

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