完調日記3
完調日記3(2010/0426)
今回のテーマは、可愛い子には背伸びをさせろ! である。
前回、学校はつまらなかったけど、図書館は別だった、と書いた。
これにはちょっと説明が必要である。
ぼくは中学・高校が同じ、今で言う一貫校へ通った。
これが 図書館との良い出会いを生んだ と思っている。
授業は正直たいして面白くなかった。それは先生のせいだけではない。
なんてったって、男子校だったから。
あの男くさーい教室で、山口百恵の水着写真を取り合ってはしゃいでる連中を見たり、バスケットの試合中に相手チーム(もちろん共学である)にかかる「せんぱーい♪ファイト」という黄色い声を聞いたりすると、俺の青春はどこへやらと思ったものだ。
何を隠そう、私は、バスケット部のキャプテンであった。多くの学校と試合をしたが、男女共学の学校(多くは東京都立の学校)と試合をする時、だいたい向こうのベンチには可愛いマネージャーの女の子がいるわけだ。それに引き換え我がベンチには髭面の男どもが、
ナイズ、ジュードオオオオ!!!
と地鳴りのような濁声(だみごえ)を這わせてる。しかもだ、休憩の時、その女の子たちはきちんと畳んだタオルと綺麗に切り揃えたレモンを、可愛いい花柄のタッパか何かに入れて選手に渡してるじゃないか。
こっちは、パンツの臭いのするような汚いタオルと、
誰が握りつぶしたんだか判らないような、
ぐちゃぐちゃのレモン汁 をプラスチックのどんぶりになんぞ入れやがって・・・
でも、飲むしかなかったわけ、ぼくはキャプテンだったから(涙)
お前ら~、いつか、殺してやる!と何度思ったことか。。。
閑話休題。話がだいぶ逸れてしまった。
ま、そんな男子校での砂を噛むような生活の中で、図書館はオアシスだった。
ぼくがどうして図書館(図書室と言った方がいいでしょうね)へ行くようになったのか、よく覚えていない。
たしか中学2年か3年のときに図書委員か何かになったことがきっかけだったと思う。
中高一貫の図書室だったから、高校生が読むようなけっこう難しい本が置いてあって、恐る恐る手にとったのを今でも覚えている。でもどれも難しくてよく判らなかった。
プラトンの何とか篇とか、デカルトの何とか方法とか、夏目漱石やら森鴎外の全集やら、極め付けは、アインシュタイン『特殊相対性理論』・・・
うーむ、何じゃこりゃ。ちっともわかりましぇーーーんん。アインシュタインって、志村ケンが「あいーーん」って、あれじゃない、確かノーベル賞とった人だよな。理科か何かの偉い先生だったような・・・。
するとすぐ右に『やさしい相対性理論』という本があった。
これなら大丈夫かも、と読んでみると、
「×××を簡単に説明すると、質量は重力に比例するということで」
「ニュートン力学で仮定されなかった光速度不変という原理が・・・」
などとあって、これがますます分かんない。
どこがやさしいんだ、こら!!!
まだ、こんな本早いよな、でもひょっとして自分の頭がわるいのか・・・
そう落ち込んでると、そうした本の中にアインシュタインの言葉として、次のようなことが書いてあった。
どうして自分を責めるのですか?
他人がちゃんと必要な時に責めてくれますから、
いいじゃないですか。
おお!そうだよ。自分を責めても意味がない。環境がわるいんだよ、環境が。
面白くない授業ばかりだし、英語なんか単語を暗記しろ、英作文をまるごと覚えろとか、冗談じゃない!
すると、アインシュタインが、
学校で学んだことを、
すべて忘れてしまった時、まだ残っているもの、
それこそが教育だ。
いやぁ、この爺ちゃん、イイこと言ってくれるネ!
さらに有名な、あの舌を出した写真!!
(記憶にない方は「アインシュタイン」「舌」でネットをググってください)
このひと、普通の先生じゃないな、ただ者じゃない!
そう思った時、図書室はすっかり暗くなっていて、ぼく一人しか残っていなかったんですね。以下次号(連休があるので二週間後)。
染谷智幸(そめや・ともゆき)所属は文学部文化交流学科
専門は日本文化・文学(江戸時代)、日韓比較文化・文学
ご存知、まことちゃんの「ぐわっし!」。背景はハナニラの花である。